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COSMIC WONDER Free Press

ノノ

Mar 20, 2021 | COSMIC WONDER Free Press 

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日、月、かみ、仏を尊ぶ言葉にノノがある。

京都丹後の藤織りの里、上世屋では、

かみから藤布の織り方を教わったという伝説がある。

上世屋では藤織のことを親しみを込めてノノと呼ぶ。

 

藤、葛、梶、楮、大麻、苧麻、榀、芭蕉、オヒョウ、

人は草木から繊維を績み衣にした。

 

地球の草木には、宇宙と地球の愛と叡智が内包されていて、

私達は草木を布とし、纏うことによって、

それらと一体となる感覚を身近に感じるものとしてきた。

 

その働きは、無意識のうちに宇宙へと繋がり、

人の意識はすべてと繋がってゆく。

そこにノノが現れる。

 

コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎

*「ノノ かみと布の原郷」展のステートメント

 

写真: 工藝ぱんくす舎「鬼怒沼の髪すき沼」2020年 / 撮影: 前田征紀

山の竜宮といわれる栃木県鬼怒沼。乙姫のはたおり伝説がのこる。

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The earth with Ascended

Dec 21, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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竜宮のある美山はすっかり冬景色、もうすぐ雪が降りそうです。2021年のために”Days of light”のコレクションを制作しています。このコレクションは春夏や秋冬という括りを取り払い、1年を通して1つのテーマでコレクションが成り立つようにしています。ファッションの世界ではあまりなかった考えかもしれないです。夏のスカートと冬のコートを合わしても同じテーマのものなので、デザインが共通していて、スタイリングが合うように工夫されています。同系色で集めていくとパーフェクトなコレクションが並ぶでしょう。春夏と秋冬に分けて年に2回していたコレクションを、1つのコレクションにすることで、私たちは2回あった生産を1回にまとめることができました。重複していた工程をなくし、輸送を少なくすることで、より良い状況でみなさまにお渡しできるようになると思います。そして、私たちも少し時間ができるでしょうか。森を散策したり、畑の手入れをする時間も増えるかもしれません。新しい美術のプロジェクトも進行しています。3月に発表の予定です。コズミックワンダーと工藝ぱんくす舎による、ノノ(自然布)がテーマとなる展覧会になります。詳しくはまたお伝えしますね。

 

December 1, 2020

AAWAA

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竜宮のユスラウメ

Nov 17, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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4年ほど前に竜宮の式台の横にユスラウメを植樹した。

植樹する数日前にうつしきの小野泰秀氏からとても美しい透明感のあるヒマラヤ水晶をいただいた。木を植樹する際、根元の下に花崗岩を引き、そして根の中心に水晶を入れて植えると、そこが龍穴のような気持ちの良いところになるという。ユスラウメの植樹の際に花崗岩を引き小野氏の水晶を使わせていただいた。そして植樹されたユスラウメは可愛らしく竜宮の象徴木となった。

先日、小野氏の制作した神聖幾何学の美しい刺繍腕巻布をユスラウメの幹にそっと巻いてみた。それがとても似合っているので微笑ましく嬉しい光景となった。このユスラウメは小野氏と縁があるのだろう。

 

November 1, 2020

AAWAA

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竜宮のさるなし

Oct 23, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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市川孝氏の小さな炒鍋に入れた鬼灯

 

竜宮のある山にもたくさんの木々が自生してとても豊かだ。

沢をつたい山の中へ入ると大きな木に絡まり自生するさるなしを見つけた。

木によじ登り実を口に頬張り、鈴なりのそれを籠いっぱいにして山を降りる、

まだまだたくさん残った実はお猿へあげよう。

さるなしの実は小さく甘酸っぱい、キウイの原形の果実だそうだ。

竜宮の畑では鬼灯の実もたくさんとれた。ヨーロッパの鬼灯だそうで食べられる。

独特の香りがあるまろやかな風味、優しい洒落た甘さで私はとても好きだ。

秋の山や畑はたくさんの実りが輝く宝石箱のようだ。

 

September 20, 2020

AAWAA

 

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燻製器でスモークしたさるなし

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環境の循環

Aug 22, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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土を焼くという行為はエネルギーの観点から、土の死、新しい物質の誕生を意味し、目に見える有機的な環境の循環というより、違う次元のエネルギーの循環を示唆している。良いか悪いか、好きか嫌いか、生か死か、などの直線のように思われる事象が、実は円の出来事であり、円のどの部分にあるか、居るか、ということに気づくことで、自らがその中にあることへと思い至る。球体は物質が安定する形、表と裏がない、道具を使わずに作ることが可能な形。茶碗や壺でないことでより焦点があたる。焼けたそれぞれの土の違いが一目でわかる。全ては違い、そして同じであって、それぞれが互いに行ったり来たりするエネルギーの中に感じることがある。そのものの表出した姿はある側面の姿であり、それは認識の為の指標にすぎず、表層についてのみを語ることはできない。

 

June 6, 2020

渡辺隆之

 

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うつくしいカディの村

May 23, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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インド・コルカタの都市から車で6時間ほどの長い道のり。道中、椰子の実の果汁を飲んだり、ショッキングピンクのペーパーナプキンとともにロティーや土器茶碗に入ったチャイをいただきながらカディの村に辿り着いた。4月の西ベンガルはすでに灼熱の日差しにより歩くことも容易ではないが、ありがたいことに村の人たちがたくさんで出迎えてくれた。村の家はほとんどが木の構造に土を塗った土家のようなもので、そこに草葺き屋根がのっている。工房の火をおこすおくどさんも土間から土が生えたような作りで、そこで糸の精錬をしている。原初のような美しい光景が残っていることに嬉しくなり、私たちのカディがここで織られていることをとても愛おしく感じた。糸の精練から織までを村の人たちが分担で行っている。現在、糸紡ぎは昔のガンジーのチャルカから複式チャルカになっている。糸紡ぎや糸巻きは女性が行い、大きな幅広織機の機織りは男性の仕事になっている。ある織機は土間を掘り、高機を半地下に埋め込んだようなものが印象的だった。湿度が必要なのだ。昔はどこの村でもカディを作っていたのだろう。日本でも植物から繊維を取り出し自然の布を各地の農家で作っていたのはさほど遠い昔のことではない。織機の心地よい音が響く村はみんな楽しそうだ。村の家々を案内してくれたり、木によじ登りマンゴをとってくれたり、賑やかに話をしながら村の中を散歩した。

 

その日、カディの布などを藍染めしていた古い工場跡の美しい宿に泊まった。夜、庭を散歩していると、たくさんの無数の蛍が菩提樹の木々に鈴のように輝いていることに気がついた。その美しい光はこの旅の私たちへのギフトとなった。

 

Apr 1, 2020 前田征紀

 

今回の旅とカディを繋いでくれた江崎正代さん、そして、私たちのカディをブロックプリントまで仕上げてくれるコルカタのウシュマさんとモニカさん、カディ村のみなさまに感謝と愛をこめて。

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ときをいきる籠

May 01, 2020 | COSMIC WONDER Free Press 

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日本はかつて大陸と地続きであったが、地殻変動を繰り返し、2万年程前に今の列島が形づくられたと考えられている。紀元前後に新しい文化をもった時代が到来 するまで、縄文の時は1万数千年にわたり続いた。海に囲まれた温順な日本の風土には、南からそして北から点々と繋がる群島伝いに多様な伝来があり、その長い暮らしの間、自らの文化はかたちづくられた。

 

縄文時代には土器や石器など、生活のなかで様々な様式と道具が用いられたが、その1つに自生する植物を手で編み成型した籠がある。
縄文の史を伝える日本各地の遺跡より、籠が出土。その当時の暮らしを知る手がかりとなった。人の手で編まれる籠は、長い時を経た暮らしの変容の中においても、これまでのいのちの歴史の中で重要な役割をしめてきた希有な道具といえる。

 

四季折々の日本列島のくらしの中では、自生する植物もことなり、籠の素材は、真竹、孟宗竹、根曲竹、鈴竹などの竹類、通草蔓、沢胡桃、山葡萄、山桜、つづらなど多岐にわたる。形状、編み方も、その地の暮らしを豊かに反映し各々の個性をたずさえるものとなった。稲作の土仕事に用いるもの、木の実や穀物を採取するもの、海において魚や海苔を採ったもの、くらしのいとなみに応じ、折々に編まれてきた。

 

自然の恩恵と人の手といのちがあたえられ、あたらしい時を生きる籠。素材美の特性をいかした成型の過程には、険しい山での原料の採取から、長い時をかけ生業にたましいを向ける、人の自然への畏敬の思いがやどる。自然と人間のいのちのかさなりに、うやまう心を寄り添わせ、用の美は昇華される。

 

人と自然がともにあり礎が築かれた日本の美意識。光をあてがう人の手が時をいきる籠の物語を継ぐ。長いいのちの歴史と暮らしを編む伝統的な手仕事にわたしたちの源流の光をみいだす。

 

2016年 春分

西澤さちえ

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ひらきいわ

Dec 20, 2019 | COSMIC WONDER Free Press 

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ニューヨークから来た友人客を連れ、美し山へと旅したことを発端に、加えて京都の美術家の友人である新道牧人くんが美し山のこの村に実家があり、その縁から、村外れにある山谷の屑屋「竜宮」に移住し里山暮らしをしている。動機の根幹にあるのは、アメリカ同時多発テロ事件から、東日本大震災、福島原発事故。これが私を大きく動かしていた。あれから、私の反応として、自然の暮らしや、自然農法のこと、忘れ去られていく里山での手仕事や工藝などに強く惹かれ、それらに傾倒していった。

 

私は生まれも暮らしも大阪の都市を中心とし、学生の頃から大阪と京都を行き来していた。しかしなぜかずっと、心の奥底で里山のようなところで暮らしたいと思っていた。そして、世上の動きにより眠っていた願いが浮上して里山暮らしに行動を移したのである。ここの暮らしは思っていた以上に仕事が多く毎日を忙しくさせている。子供の頃、夜の田んぼに何万という蛍が飛んでいる夢を見た、その光景を時折思い出す。色々な藍染の浴衣を着た子供たちが夏の夜の田んぼに走り入り遊ぶ夢を。

 

江戸時代の頃、ある一つの前世で、私はこの美し山から近い福井の鯖江の村に女性として生まれた。その村の風景は今住むこの村ととても似ているという。村は貧しかったが、末っ子のためか幸い奉公などに出されず村で暮らすことができたらしい。( 江戸時代は縄文時代のように豊かな時代と一説にあるので、この前世は幕末の頃だと思う)私はとても美しい女性になった。農民として働き、御侠でおしゃれな女性のようである。最初の夫は早くに馬か何かの事故で別れ、工藝品などを作る男性に惹きつけられ付き合っていた。しかし、長女の姉が亡くなったということで、姉の旦那と急遽結婚することとなった。その家に嫁ぎ、間も無くすぐに死んだらしい。この前世が私にとって楽しい人生の一つだったようだ。前世で私の姉であり、今世ではお料理屋「魚棚」を営んでいた友人の山本純示さんが教えてくれた。

 

先日、村の近くにある「ひらきいわ」を牧人くんと取材した。牧人くんも京都から村の実家に戻り、家が営む藍染を引き継ぎ同じ村の住人となっている。「ひらきいわ」は白い大きな巨石で構成された磐座のような佇まいの遺跡である。古代に形成されたものだろう。縄文時代の頃か、その後のものかはわからない、詳しく研究されていないのだ。しかし、大きな巨石はきっちり東西に切られ、所々にスリットが作られていて、古代の天文観測所のように感じられる。夏至や冬至に、太陽と月の動き、北極星の位置などを観測したのだろうか。岩肌は美しい白石であり、古代の人もその美しい透明感のある白い巨石に惹きつけられたのだろう。

 

この辺りは、いくつかの村を総称して知井村と呼ばれている。知井の語源は遠く朝鮮半島の智異山からきている。古代、朝鮮半島の百済からこの地の祖先がきて開村したと言われている。智異山から北緯三五度沿いの延長の最後に知井村があり、その間に知井と付く地名と、竜宮伝説があるという。おそらく、福井の方からも道筋にしてこの辺りに大陸の人たちが入ってきただろう。近くから縄文時代の黒曜石も発掘されている。縄文の人のいとなみと大陸の人たちがどのような関わりを持ち、この場所がひらけてきたのかはわからない。

 

私はなぜか大切にしている百済土器を一つ持っている。今はそれを「竜宮」の床の間に置いている。全ての事象はつながった絵のように感じるが、霧のようなものがかかり絵の全体像がわからない感覚である。小さな事象も私にとっては大切な鍵となる。これからも偶然で必然的な出来事の連続により、いつか澄みきった絵が見えてくるだろうか。たくさんの愛する星を連れ、流れのままここまできたのだから、みんなでおもしろく美しい絵を見てみたい。

 

前田征紀

 

『mahora』創刊号 寄稿(発行: 八耀堂)

 

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Harmonic Meditation
Arts and Crafts
vol.2

Nov 29, 2019 | COSMIC WONDER Free Press 

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ドイツの思想家 ルドルフ・シュタイナーの考案によるライヤー を見ると、かつて私がルドルフ・シュタイナーの人智学に没頭したことを思い出す。そして、人智学や神智学をより深く知りたいと思い、ルドルフ・シュタイナーの翻訳を多く手がけられ、日本の第一人者のお一人であり、神学の研究家でもある故 西川隆範先生と親しくさせていただいていたことも。その頃に私の制作した美術作品のテキストを西川先生に2度ほどお願いしたこともある。西川先生は体も大きくおおらかで優しく、とても素敵な方であった。私がお会いしていた頃は西川先生の晩年になるだろうか。その頃、西川先生は地球が良い方向へ向かうようにいつも願われていたように感じる。

西川先生の最後のブログはこのようなテキストで始まっていた、「2011年春、命と引き換えに原発事故を収束させようと祈念したら、心不全になった」。まだ暑さの残る晩秋、少し遠くにある喫茶店に早く入りたいと思い、早歩きでアスファルトの道を歩き、お疲れの西川先生の息を切らしてしまったことを時々思い出す。西川先生は甘いものが大好きだった。

カテリーナ古楽器研究所はマザーライヤー とベイビーライヤーの2種類のライヤーを制作している。マザーライヤー を制作するとき、そのくり抜いた木で生まれてくるのがベイビーライヤーという。カテリーナ古楽器研究所の松本未來氏が作ったライヤー は清々しく美しい。彼が作る様々な中世の楽器は西洋楽器にも関わらず、すべて日本の木で制作されているそうだ。そして、驚くことにそれらの楽器は現存するものが少ないので、ルネッサンスの絵画などを参考に再現されている。時も国も超えたカテリーナ古楽器研究所の楽器から響く音色にたくさんの人が魅了されている。

 

瞑想するとき、その空間を浄化することは瞑想においてとても重要なことだという。空間を浄化するということは現実的な部屋の掃除も良いだろうし、セージやハーブを使うことも良いだろう。その場所と自分のエネルギーまでも浄化するということであれば、霊的な動きが必要だろうか。私はアセンデットマスターのセイント・ジャーメインによる、愛と浄化のバイオレットフレームにいつも助けられている。セイント・ジャーメインのバイオレットフレームを想像してその紫の炎に包まれることで清らかな高波動の状態になれる、とてもありがたい炎なのである。Cosmic Wonderが制作したチョガッポの作品は、韓国でもとめた手織りの苧麻絹布をベンガラとログウッドで染め、その布の断片を紫色のグラデーションにして、それらを繋ぎ合わせ重ねることで幾何学模様を作っている。作品を自然光に透かすと、作品の真ん中に薄い紫の六芒星の光が浮かびあがる。そう、私はセイント・ジャーメインの愛と浄化のバイオレットフレームを表現したいと思った。

 

rinn to hitsujiの蝋燭作家 鈴木りえ氏に天使の蝋燭がほしいと言ったとき、鈴木氏が驚いた顔になった。鈴木氏は数年前にある人に天使の蝋燭のシリーズを制作すると言われたそうだ。天使からのお告げのようなものなのだろうか。天使蝋燭受胎告知から、何年経っても鈴木氏に天使のインスピレーションは感じられず、人型に近い作品といえば縄文土偶の土偶蝋燭を制作していた。鈴木はいつしか土偶が天使のようなものなのだろうかと思っていた。蜜蝋でできた土偶蝋燭はとてもユニークで可愛らしく鈴木氏の作品の中でも人気の高いものになっている。そして、この度、私が天使のことを言い出したことで、天使の蝋燭がとうとう現れることになったということだ。それから、鈴木氏は天使のインスピレーションを自身におろすための生活が始まった。しかし、鈴木氏の印象はお会いした時から常に天使に囲まれているように見えた。鈴木氏の蝋燭は全て手で形成され、型は使わずに一つ一つ丁寧にその印象を想像しながら制作していくという。天使は心で思えばいつでも現れてその人をサポートしてくれるそうだ。鈴木氏の作った白い天使の蝋燭、点火すると天使が舞い下りて美しさに満ち溢れた素敵な空間になるだろう。

 

Harmonic Meditation Arts and Craftsのコレクションは、ここ数年にお会いした作家や友人にお願いして作品を制作していただいた。見る人にはとても静かなコレクションに感じるかもしれないが、私はとても美しいコレクションだと思っている。目に見えているものの背後に霊的な気配がある美しい作品、それらは、人の心の栄養となり魂の記憶となるだろう。これからのアートと工藝を支えていく側面になり、沢山の花が開いていくのだと思う。

 

Sep 15,2019

Yukinori Maeda

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Harmonic Meditation
Arts and Crafts
vol.1

Nov 28, 2019 | COSMIC WONDER Free Press 

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私たちは今宇宙と繋がり、本当の自分と繋がり

多くの人たちが悟りを開いて生きていくという。

光と陰は統合し真琴の美しさに満ち溢れる。

調和の瞑想のためにいくつかのアートと工藝を集めてみた。

 

天使を暮らしの中で感じるために、天使の印象をまとった木片がほしいと思った。少し遠出をした時、美しい湖のある森に入りそれを探してみた。森にあるブナやクヌギなどの朽ちた枝や木片を拾い集めそこに天使の面影を探してみたが見つからなかった。ある日、友人の家を訪ねた時、その近くに住む美術作家の田代裕基氏に会った。

彼のアトリエに粗く彫った木片が一つごろりと転がっていた。それは天使そのものだった。私は無作為な形状を一目で気に入った。田代裕基氏は作品を制作するとき、霊的なものとのあわいを表現している。霊的なものとのあわいを表現すること、これは原初的な芸術の目指すところであると思う。

 

水晶の美しさは水晶と仲良くなればなるほど輝きが増すように感じる。水晶と仲良くなるとは、水晶に慣れない人には不思議な表現かもしれないが、おそらく水晶と人は仲良くなるものなのである。水に愛のある言葉をかけると周波数が変わり結晶の形状が美しく整うという。水晶にもそのようなことがあるのだろうか、水晶は人の接し方で見違えるほど違う気がする。装身具作家 小野泰秀氏の作品の水晶はとても美しい、彼は水晶といつも対話して作品を制作していると思う。人は近い将来、体の組織がケイ素化して水晶の身体を手に入れると聞いたことがある。水晶を身につけることは、それと共鳴して高い周波数の自分の姿を感じることなのかもしれない。余談かもしれないが、人の身体は水でできている。愛のある言葉やその波動は身体にとても良いものなのだろう。

 

壷という形状に私は惹かれる。おそらく古代から人の惹かれる形状として壷は上位を占めるのであろう。土器作家 安田都乃氏は壷から音のような振動が流れているという。壷内の波形を図ると大きく口の開いた壷は周波数は低く、口の小さな壷は周波の共鳴速度が速く高周波が発されているという。私は安田都乃氏の壷を枕元に置いて寝ている、私にとって癒しの壷なのだ。

人は壷を手に入れるとき、無意識に自身の波動とあった壷や、しっくりとくる壷、より良い自分になる壷、自分にとってより良い空間を作る壷、そういったものを選んでいるとしたら、壺は花活けや見立て調度品以上の大切なありがたい存在なのかもしれない。

 

木工作家 川合優氏の作品からはいつも、神さまのお宮で使われるような印象を受ける。ある作品からは神の畏敬を感じることもある。この感覚は日本人特有の自然観によるものだろうか。川合優氏は日本の木による作品を制作する、その木がこの島国のどのような山や森で育ってきた木なのかを考え作品を制作するという。木の育った情景を想像して、木の作品と暮らすことはとても楽しい。Center for COSMIC WONDERの家具、机、椅子、棚などは川合優氏によるもので、私の住む築約200年の古民家も川合優氏の家具と、朝鮮の古い家具で構成している。私にとって 川合優氏の家具と古い朝鮮のものが合うのは不思議なことではないと感じている。話は変わるが、日本の山の事情はどうなっているのだろう。山に植林され放置された多くの杉、人が山に入らなくなり荒れた山。山を有効利用したソーラーパネルの風景も寂しく感じる。里山の風景を徹底的に壊す、それらは本当に必要なのだろうか。杉は挿し木で成長したものは根が浅く倒れやすい、そして密集して植えることで存命の危機を杉が感じて花粉を大量に出す。人口的に植えた杉は管理して使っていかないとないといけないものだ。もちろん、これ以上、管理しない杉を植えてはいけない。私の家の周りも放置された杉山や砂防ダムなどがあり、その問題をいつか解決しなければならない日が来る、山の問題は人ごとではないのである。川合優氏の針葉樹林のプロジェクトSOMAの活動は日本の山を変えていく良いきっかけになるだろう。

 

山や野原にある草や木の繊維でかつて日本人はほとんどの衣の布などを補ってきたのはそう遠いことではない。それらは今は自然布といわれ風前の灯火で受け継がれている。綿が普及したのはここ最近のことなのである。自然布は、大麻布や苧麻布をはじめ、オヒョウ、藤布、科布、葛布、紙布、太布、芭蕉布など。山に入り材料の調達から、剥ぎ、灰汁焚き、糸績みから織りまで気の遠くなるような作業がかつての日本の農家の仕事であり、日々やっておかねばならない暮らしの中で重要な事柄だったのだろう。京都市内にある古い自然布や古民具を扱うギャラリー啓の川崎啓さんから古い科布の布巾をいただいた。川崎啓さんは各国から訪れる古布に興味のある人たちに自然布のことを丁寧にたくさん教えてくださる。その科布の布巾はたくさんの穴が開いていたので、衣のお直し作家 横尾香央留氏にお直しをお願いした。科布の布巾は蒸し蓋の代わりに使われていたものだそうで、横尾香央留氏はシルバーの糸で美しい湯気を刺繍で表現した。横尾香央留氏は着用を繰り返した思い出深い傷んだ衣をお直しによって衣の持ち主と衣をもう一度今に繋げる天才である。傷んだ衣の持ち主とセッションを重ね、その物語を構築し、独特な彼女のお直しが美しい手法で織り込まれる。もともと、科布の布巾は私のものではないが、布の記憶を辿り想像した物語が表出することも面白いのではないだろうか。

 

Sep 01, 2019

Yukinori Maeda

 

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愛なるかたち

Oct 28, 2019 | COSMIC WONDER Free Press 

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飛鳥は古の百済の人たちがここを築きあげたところ。タナカシゲオ氏は奥飛鳥の山谷、明日香村の栢森にある築280年の大きな古民家を自身で改修し、その中庭に藁塊を構造とした韓屋のような工房を建てそこで仕事をしている。工房も家も時を遡る古い佇まい、その中での暮らしはとても美しい。栢森には龍神が住むという女渕、男渕ある。どちらも山道からはずれた山の奥に瀧があり、そこに深い渕がある。渕はとても深いので清んだ水が重なり翡翠の色をしている。そして、その渕は竜宮につながっているといわれる。氏の白磁の作品から翡翠の色があふれている、私はその色彩を龍の目の輝きのようなものと感じている。氏の窯は家と工房の近くの山谷の山中にあり、窯の周辺に氏の畑もある。窯は登り窯よりも古い形式の穴窯と倒炎式薪窯による。いつも畑で採れた美味しい果実などを送ってくださる。この度の窯焚きは4日間を通して温度が1000度を超えず釉薬が溶けないという心配があったという。しかし、不思議なことに窯の煙突から火柱が上がり窯焚きは終わり、翌朝、窯の中を覗くと、釉薬が美しく溶けたやきものが見えたそうだ。今作はたくさんの薪を燃やした痕跡なのか灰の表情が一段と美しく感じる。最近では何故か白磁の翡翠色の中に美しい桃色が浮かび上がることもある。氏のやきものは古の形に彩られている奥に、日々取り組まれている真理の探求、宇宙の事象の数々がにじみ出るという、絶妙な感覚を持って作品が成り立っている。古と新たな精神の進化が混沌とした美、それが氏の作品を無二にしている。また、こういったことが私を氏の作品に向かわせている。今作の作品の中に土の形成を轆轤で目を瞑って形したものがいくつかある。美しさの奥にある氏の真が愛に溢れ現れていく。

 

Oct 1, 2019

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タメさんと藤織り

Apr 07, 2018 | COSMIC WONDER Free Press 

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光野タメさんの藤布による井之本泰氏のためのタッツケ

 

湿気を含んだ玄関戸を開けると、外の明るさとは裏腹に、土間の暗さに、一瞬、目がくらみ立ちくらむ。

「誰じゃいな。こんな雪降りに。」

「資料館の井之本です。」

「また、資料館の兄さんかい。」

煤けた障子越しに、囲炉裏の明かりで丸まった姿の声の主が映し出された。

 

囲炉裏端にヘコッテ(座って)、両足を投げ出し、足の親指に繊維を引っ掛け、さばきながら、スルスルと結び目をつくることなく、手の親指と人差し指の感覚で撚り合わせ、横に置いたハリコ(張り子籠)に繰り入れていく。これをウム(績む)という。

見ていると、指先に目があるのではないかと思わせる手さばき。まるでその姿は繭をつくるために糸を吐く蚕のようだ。

 

「ウラ(私)は。人前で、藤織りのことを話したこともないし、教えたこともない。何回頼まれてもでけんもんはでけん」とがんとして断りつづけられていた。

「雪のなかを何回も頼みに来とんなる。せめて一回でもカタッタッタ(関わる)らどうや。」蒲団に包まる連れ合いの新太郎さんの一言で、光野タメさんと小川ツヤさんの指導のもと、見よう見真似の藤織り講習会がはじまった(1985年(昭和60年))。

 

藤織りを伝えるおばあさんたちも高齢化で、その技術が危ぶまれることから記録映画を撮影することになった(1987年(昭和62年))。

当時、京都の織物問屋「秀粋」の依頼を受け、茶室用の座布団に加工するために、織り幅が約45㎝だった。撮影にあたっては昔ながらの着幅約35㎝にもどしてお願いすることになった。

 

「一反では調子が出ないので、二反織ることにしょうか」と主役のタメさん。ついてはその2反(1反15万円×2反+織りはじめと織じまいも含め32万円)を買ってほしいとの申し出。当然と言えば当然のこと。

資料館勤めの駆け出しだった私にとって、資料館で購入することも考えられたが、予算化することが出来ず、結局、映像記録とともに現物の反物が残るんだと自分に言い聞かせ、思い切って購入した。

 

そして今、その一反を使って、前田征紀さんのところで「タッツケ」に仕立ててもらった。雪解けとともに、タッツケをはいて野良仕事をはじめることにしょう。

タメさんも「アンタもモノ好きな人だ。」とあの世で笑っていることだろう。

 

合力の会・井之本泰

 

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囲炉裏端で座り藤績みをするタメさん

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