COSMIC WONDER Free Press

タメさんと藤織り

Apr 07, 2018 | COSMIC WONDER Free Press 

presspress-tamesan-2

光野タメさんの藤布による井之本泰氏のためのタッツケ

 

湿気を含んだ玄関戸を開けると、外の明るさとは裏腹に、土間の暗さに、一瞬、目がくらみ立ちくらむ。

「誰じゃいな。こんな雪降りに。」

「資料館の井之本です。」

「また、資料館の兄さんかい。」

煤けた障子越しに、囲炉裏の明かりで丸まった姿の声の主が映し出された。

 

囲炉裏端にヘコッテ(座って)、両足を投げ出し、足の親指に繊維を引っ掛け、さばきながら、スルスルと結び目をつくることなく、手の親指と人差し指の感覚で撚り合わせ、横に置いたハリコ(張り子籠)に繰り入れていく。これをウム(績む)という。

見ていると、指先に目があるのではないかと思わせる手さばき。まるでその姿は繭をつくるために糸を吐く蚕のようだ。

 

「ウラ(私)は。人前で、藤織りのことを話したこともないし、教えたこともない。何回頼まれてもでけんもんはでけん」とがんとして断りつづけられていた。

「雪のなかを何回も頼みに来とんなる。せめて一回でもカタッタッタ(関わる)らどうや。」蒲団に包まる連れ合いの新太郎さんの一言で、光野ためさんと小川ツヤさんの指導のもと、見よう見真似の藤織り講習会がはじまった(1985年(昭和60年))。

 

藤織りを伝えるおばあさんたちも高齢化で、その技術が危ぶまれることから記録映画を撮影することになった(1987年(昭和62年))。

当時、京都の織物問屋「秀粋」の依頼を受け、茶室用の座布団に加工するために、織り幅が約45㎝だった。撮影にあたっては昔ながらの着幅約35㎝にもどしてお願いすることになった。

 

「一反では調子が出ないので、二反織ることにしょうか」と主役のタメさん。ついてはその2反(1反15万円×2反+織りはじめと織じまいも含め32万円)を買ってほしいとの申し出。当然と言えば当然のこと。

資料館勤めの駆け出しだった私にとって、資料館で購入することも考えられたが、予算化することが出来ず、結局、映像記録とともに現物の反物が残るんだと自分に言い聞かせ、思い切って購入した。

 

そして今、その一反を使って、前田征紀さんのところで「タッツケ」に仕立ててもらった。雪解けとともに、タッツケをはいて野良仕事をはじめることにしょう。

タメさんも「アンタもモノ好きな人だ。」とあの世で笑っていることだろう。

 

合力の会・井之本泰

 

presspress-tamesan-1

囲炉裏端で座り藤績みをするタメさん

+ Share

 

やまかみのめざめ

Mar 06, 2018 | COSMIC WONDER Free Press 

freepress-awakeningofyama-kami

+ Share

 

美し山の春雪

Feb 05, 2018 | COSMIC WONDER Free Press 

freepress-thespringsnowofutsukushiyama

 

睦月の終わり春節にかけ、この郷は雪に覆われ白く美しい光景を見せる。

その白い世界は人の内にある何かを引き出そうと、篭る作業を夢中にさせる。

その環境は死に近く、いっそうの静けさゆえに生を強く光らせると、

それを反射させたり音のように吸収したりと呆然とした感覚が続くのである。

 

先年、私のいる山すその竜宮は雪の吹きこむ谷間の具合から、それががかまくらのようになった。

思い出すと、山と屑屋の茅屋根がその雪により地続きとなり屋根裏に小さな野生動物が出入りしていたが、

この度は屋根と山が一つにならぬように努力をするだろう。

そういえば、ここにきて1年がすぎたが、それが長かったのか短かったのか自覚がなく、

見知らぬ土地に住んでいるという意識もなく、ただそこで暮らしているというありがたいことになっている。

 

今日のような深々と雪の降る日に、隣の深山幽谷の芦生の森に踏み込めば、

あちらの世界につながる恐ろしく美しい白秘境が現れるだろう。そのような森にいつか入ってみたいと思う。

このようにいうといまいましい文人が言うようなことに聞こえるが、そうではなく純粋に美しい自然をみたいのである。

 

白雪の山に獣の足跡を見つけると、それを辿る遊びが始まる。雪の上に人と野生の交わる痕跡が一時描かれる。

 

2018年1月22日

この郷のご縁に心から感謝をして、

前田征紀

「智異竜宮日誌」より

 

写真: 仲川あい

+ Share

 

芳木器

Nov 22, 2017 | COSMIC WONDER Free Press 

event-masarukawai-2

Masaru Kawai

Houmokuki 2017

Japanese cypress

 

+ Share

 

静寂の未知炉、新たに光を灯すよう
第3章

Sep 26, 2017 | COSMIC WONDER Free Press 

paper and crystal 2003

永遠であるものと永遠でないもの

− たとえば紙と水晶をならべてみた

では船長、永遠を知るものはだれなのか?

私はそれを、船にのせてゆこう。*

 

全てのコレクションが紙でつくられ、その一つ一つには、フラットにカットした水晶がアタッチメントされた。水晶が永遠であり、紙が永遠ではないということではなく、全てはつくられては壊れなくなってゆくという、一刻にとどまることがないことを感じさせることを作品として発表。

 

N.H: Paper and Crystelというのは紙でできた服のコレクションです。Cosmic Wonderでは最近も、紙衣という和紙をつかった服が発表され、「水会」「お水え」でも着用されたのですが。当時のコレクションPaper and Crystelについてうかがいます。拡張するファッション展のとき、スーザン・チャンチオロが当時のCosmic Wonderの紙でできた服を着て、オープニングに現れました。「生活のなかで本当に着られるんだ」と感慨深かったですよね。

Y.M: 笑 パリコレで発表したときは、リベラシオン新聞の朝刊に片面全部がこの時の紙の服の写真で、紙に紙の服の写真が印刷されていて面白かったです。

N.H: 布とはまったく違うシルエット、ボリュームが出ていますね。

Y.M: 制作してみたら、思いのほか、すごいボリュームでした。

ずっと好きであつめていたものが水晶でした。また、印刷物や紙でできたものがとても好きです。だから、自分の好きな2つのものを並べてみよう、という。そういう感じで始めて、その2つが対比できたらきれいだなと思いました。

白い服はフェデックスに使われるような郵送用の紙を、他の色の紙はリサイクルペーパーを使用していました。紙に芯を貼ったり、裏から布を貼ったりして破れにくくしていました。

 

 

Forest Heights Lodge COSMIC WONDER 2004

森林宿舎コズミックワンダー

 

あなたの空に太陽と月が同時に現れます。

森林宿舎コズミックワンダーにあるもの

昼間用のナイトウェア、昼間用の寝袋、昼間用のまくらとベッドカバー、昼間用のピクチャー*

 

N.H: Cosmic Wonderのコレクションは、この後大きく方向性を転換して、男女の群像が美しい理想郷にたたずんでいる、という方向に向かいました。最初がForest Heights Lodge Cosmic Wonderです。それから、magic villageへと続いていきます。

Y.M: 9.11のことをずっと考えていました。いろいろな要素を行き来しながら制作してきたわけですが、個人的な表現から少し離れてみようと思いました。制作に対しては、理想郷的なこと、自由や精神世界への憧れというのは、初期からあったのですが、それをもっとはっきり、視覚的にも伝えていこうと。精神世界への興味を作品に取り入れていくことは、今も続いていることですが、その方向にどんどんいこう、となりました。クリエーション重視の側面と、スピリチュアルな印象を持ち、服としても着心地の良いものという側面、その2つでずっとゆれ動いていたと思います。空間を意識して制作することは変わらないことだったかもしれないですが。

N.H: 今も、この先も、その基本的な姿勢は変わりないかもしれないですね。

Y.M: 最初から同じようなことを考えてやっているにしても、この時期からもう少し、誰が見ても自分の見ている方向性をはっきり示そうと思うようになりました。いま自分がどちらの方向を向いているかということを示すのも、アートの役目の1つ だと思うので。

N.H: 最近のことですが、スタジオも住まいも美山に引っ越されたことは理想郷のイメージだったからなのでしょうか? 空間のなかの服というか、これまで描いてきた理想郷が現実になっていく、実生活でのプロセスなのかなと思います。

Y.M: 精神性を深く理解して創造することができたらと思っています。

山の暮らしの中から、そのような何かを生み出せるでしょうか、

自然に近い瞑想的な生活を行うことで助けとなるでしょうか。

ここから何が生まれてくるでしょうか?

*詩のテキストはコレクションにつく当時のコンセプト

 

2017年1月17日

林央子 前田征紀

 

freepress-nakakohayashi-3-3

paper and crystal 2003
Photography by Shoji Fujii

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA freepress-nakakohayashi-3-2

Forest Heights Lodge COSMIC WONDER 2004
Show at Cosmic gallery, Paris
Photography by Yuki Kimura

+ Share

 

静寂の未知炉、新たに光を灯すよう
第2章

Jul 12, 2017 | COSMIC WONDER Free Press 

to sleep 2002

寝るための儀式をするための道具とドレス

ハンガー、タンスの引き出し、ネックレス、ドレス、Tシャツやジャケットが一体化した作品。

くっつけてはならないものをたやすくくっつけて一つにする。

それによって新たな価値観をつくりだす。*

 

 

A shadow Necessary for Windows 2002

これは私の中にある風景の一つです。もしくは私たち全員が心のどこかにあるありふれた風景かもしれません。

私たちは眠っている時とおきている時があるように思われます。

そしてそのどっちでもない時があるようです。

それを毎日毎日繰り返しているのです。

最後はどこでとまりますか? それとも終わりはないのですか?

カーテンとそれにたたずむためのドレス*

 

 

What invisible view should be ~ from some pictures 2003

写真で写っている部分を再現し、写真では見えない部分を取り除く。

写真から切り取られたようなパフォーマンスは、その空間で宙に浮き、写真本来における記録とは異なった、新たな存在と意味が生まれる。*

 

N.H: アート的なインスタレーションが続いた時期の作品です。

to sleepは、引き出しとドレス、ネックレスとハンガーというようにさまざまな服が室内装飾と一体化していました。A Shadow Necessary for Windowsでは服とカーテンがくっついて、フリンジが随所に配されていました。私はこの時のインスタレーションがすごく好きです。Cosmic Wonderらしいグレーのワントーンルックとか、フリンジのデザインが少女漫画みたいにロマンチックな要素をもっていたところも。

What invisible view should beでは、ファウンドフォトにうつっている服の部分をそのまま再現した、というものがコレクションピースで、写真では影になっていたり切り取られている部分は存在しない、パーツだけの服です。

A Shadow Necessary for Windowsも驚きでしたが実際は、ジャージー素材やコットンなどで思いのほか着易い、という意外性も含まれていました。この時は、その時の驚きを超えるというか、それだけでは着ることができない服。

Y.M: 実用性に向かないパフォーマンスの道具のようなところから派生した物を、日常で使うという面白さがありました。

N.H: この、疑問符をなげかけるようなコレクションも、とてもCosmic Wonderらしいと思うのですが、イメージのチョイスや構成で意識していたことは何でしたか。

Y.M: 一体一体の服ではなく、全部をみてひとつの印象が残るように考えました。

N.H: このときは招待状がポスターで、ファウンドフォトが一枚の紙に印刷されているのも印象的でした。

*詩のテキストはコレクションにつく当時のコンセプト

 

2017年1月17日

林央子 前田征紀

 

freepress-nakakohayashi-2

to sleep 2002

Photography by Yukinori Maeda

 

freepress-nakakohayashi-3

A shadow Necessary for Windows 2002
Show at  Palais de Tokyo, Paris

Photography by Yuki Kimura

 

freepress-nakakohayashi-4

What invisible view should be ~ from some pictures 2003
Show at Cosmic gallery, Paris

Photography by Yuki Kimura

+ Share

 

1 2 3 4